地方出身者には帰る故郷が無い

Vol.13 東京生まれ東京育ちが地方出身者から授かる恩恵と浴びる毒 〜前篇〜〜後篇〜
http://janesuisjapanese.blogspot.jp/2013/08/vol13.html
http://janesuisjapanese.blogspot.jp/2013/08/vol14.html

私は両親も東京出身なので、盆には帰省する場所がありません。

地方から大学進学と同時に上京したような人間には*1、帰省する故郷はあっても、帰ることができる故郷は無かったりする。
地方には大学を卒業したような人間に仕事は無い。
新卒でUターン就職をしないという選択が、残りの人生の全てを家族と別れて、家賃を払いながら生きてゆくという選択を意味する。

東京はまるでプロレスのリングのようです。
たまたまリングの上に生まれ育った東京人が茶の間でボーっとお茶を飲んでいると、
突然ドスーン!とすごい音がして床が揺れる。なにかと思って振り返れば、
恥ずかしくなるような派手なマスクをかぶった人がリングに上がってきて、
大技を極めたり派手なポーズを決めたりしている。
それに対してリングの外からウォーーーー! と歓声があがり、
似たような人がどんどんリングにあがってきて新たな大技を決める。

年代の違いか職種の違いか*2、上京した知人にプロレスラーは少ない。地元の大学よりは偏差値が高くて私立の学費を払える人みたいなタイプが一番多くて、一旗揚げてやるみたいなタイプは少数派だったと思う。

しかもリングの上で敗れた人は、
「東京は冷たい街…」と恨みごとを吐いてリングを立ち去っていく。

戦いたくないのにいつの間にかリングに上げられて、梯子を外され退場すら許せない人からすると、立ち去ることができる選手はまだ幸運だ。

「あいつらに私たちの気持ちはわからないし、奴らの気持ちもわからない!」
そう腐っていた私の考えが変わったのは
30代前半にNYへ出張へいったときでした。
それまでも観光でNYに行ったことはありましたが、仕事で行ったのは初めて。
たった1週間の滞在でしたが、マンハッタンのド真中にあるオフィスに通い、
アメリカの雑誌やテレビでしか見たことのない著名人や
荒っぽいニューヨーカー(という名の地方出身者。多分。)と対峙したりしていると、
いつしか「この摩天楼め! かかってこい! やってやる!!!」という気分になってくる。

『「いろいろしがらみあるけど、やっぱり落ち着ける地元」を残したまま、NYでやりたい放題やりやがって。』
っていう気持ちになったので、私にはジェーン・スーさんの気持ちがよくわかった。

地方出身者には、生活して、暮らして、生きてゆける故郷を無くしてしまった人もいる。
気持ちを理解して欲しいとまでは言わなくても、皆同じように見える「気負っている」地方出身者には、そうゆう人がいるってことには気がついて欲しい。

*1:こんなこと書いといてアレですが、私は東京で生活したことがありません。地方vs都市くらいの感じで読んで下さい

*2:偏差値かもorz